<3月1日(木)放送>
北海道、札幌。
ある、うつ病患者の女性が暮らす部屋を訪ねた。
ソファに寝ころび、テレビを見る小野田美奈子さん。27歳。

うつ病を発症して1年あまりだ。
かつて通っていた会社の社員旅行の写真。
小野田さんは同僚との人間関係になやみ、
会社に行けなくなった。
実は、小野田さんは去年、いちど職場復帰に
トライしたことがある。
しかし、すぐに症状が悪化して、結局、会社はやめた。
いまは食事を買いに出るときと治療以外で部屋を出ることはない。
「まず身体がだるいとか。とりあえずもうベッドから起きあがれない状態。」
抗うつ剤、精神安定剤などを飲みうつ状態をどうにか押さえている。

うつ病の症状が出ると、ベランダからの飛び降り自殺も考えるという。
なんとか、うつ病を治したい。
小野田さんはタクシーで、治療に通う。
人ごみではパニックの恐れがあるのだ。
かさむ交通費も、彼女を経済的に追いつめる。
小野田さんが通うクリニック。
彼女は、ここである特別な、グループ治療を受けている。
この日、8人のうつ病患者が集まった。
患者たちは数カ月間にわたり一緒に治療を受けているので顔見知り。リラックスできる環境だ。
ここで行われるのが演劇療法、サイコドラマと呼ばれる治療だ。

現在サイコドラマを手掛ける医師、カウンセラーは
日本におよそ100人しかいない。
この日も横山医師は小野田さんのドラマを作り始めた。

一番辛かったのは、何か。
それは、職場復帰にトライした日のことだった。
医師
「一番つらかったのは?」
小野田さん
「復職したとき…(医師:復職したての自分?)」
「1日目でパニクって泣きじゃくってここに電話してきた」
その、彼女はこんな状況におちいったという。
出勤は、5カ月ぶりだった。
しかし職場復帰初日、いきなり涙があふれ、呼吸も乱れる。
あわてて飛び出し、駐車場でしゃがみこんだ。

クリニックに助けを求め電話したが医師や担当のスタッフとつながらず、パニックになった。
その状況を再現する。
駐車場の車にまで、役をあてはめる。
まずは小野田さん本人がその時の状況を再現してみせる。
小野田さん
「小野田ですけども、院長先生いますか」
スタッフ
「いま、(電話)できないんです」
小野田さん
「千葉さん、お願いできますか」
スタッフ
「いま治療で電話に出られないんです」
小野田さん
「分かりました」
こうして、その日の小野田さんの状況を
参加者全員で頭に入れる。
続いて、別の患者が、小野田さんの役を演じる。
小野田さん自身は、それを離れて眺める。
距離を置いて、自分を客観視させるのだという。
医師
「ご自分の姿見えますか?そこに立ってて。」
小野田さん役患者
「千葉さんとお話すことはできますか」
スタッフ
「千葉も申し訳ないんですけども今デイケアに出て、出れないんです」
小野田さん役患者
「また電話したいんですけど、いつごろだったらよろしいですか」
スタッフ
「12時半くらいにお願いできますでしょうか」
小野田さん役患者
「はいそしたらまたそのころ掛け直します」

横山医師は、「車」役から小野田さん役に声をかけるよう、
うながす。
医師
「彼女に何か伝えてあげてください。じゃ、どうぞ。」
パニックにおちいる小野田さんを脇の「自動車」は、
どう見ていたのか。
小野田さん役患者
「はいそしたらまたそのころ掛け直します」
車役患者
「1日目にしてどうしたんだろう」
「はたから見たら、まだ職場復帰1日目じゃないか」と
自動車役は感じたのだ。
その車の言葉を通して、まだたった1日なのに、
焦らなくてもいいのでは、と気づかせるのだ。
あのときの自分を、今では笑いながら振り返れる小野田さん。
この、今の小野田さんから、過去の小野田さんにメッセージを送らせよう。
横山医師は、小野田さんを導いていく。
医師
「今のあなただから伝えてあげられる事は何かありますか?」
小野田さん
「焦るのはよくないっていうことを院長先生に教わって、
もう1年経ってそれは身に付いたことなので、
うん焦らないでもうちょっと休んでる期間を伸ばしたほうがよかったんじゃないかなって。」
「現在の自分から、過去の自分にメッセージを送る」。
ここに、うつ病を治すためのヒントがあるのだという。
「焦らなくても大丈夫」。
最後は、そのメッセージを、小野田さん自身が、受け取る。
車役患者
「1日目にしてどうしたんだろう」
医師
「だけどもうひとりの自分からメッセージが届きます」
小野田さん役の患者
「焦らなくても大丈夫だよ。」
なにげなく見える、こんな一言がうつ病患者には大事なのだという。
そして、ドラマの最後。
小野田さんはあのとき感じていた
同僚への「嫉妬心」のような、本来なら認めたくない感情も
みんなの前で口にすることが出来た。
小野田さん
「そうですね焦ってましたね」
医師
「この時はすごく焦ってた?」
小野田さん
「うん。仕事を取られたくないっていう思いがあって。
焦って、うん。仕事に行ってたっていう感じですね。」
サイコドラマが終わると、患者達はその日気づいたことを話し合う。
「そうやって困った時電話できる相手がいるのってすごいいいなあって。」
「自分にもそういう時って絶対あるなっていうのは
感じましたね。で僕が心がけてることなんですけど、
一呼吸置くことっていうのが焦りを取るのには
すごく有効的なんじゃないのかなって感じましたね。」
理解しにくい自分の心の病の原因に気づかせてくれるサイコドラマ。彼女は春、就職活動を開始する予定だ。
(※今回の特集の動画はありません)